今回、レトロフューチャーなロボットというテーマで絵を描きました。
どんなことを考えながら完成に至ったか、主に発想のプロセスを書いていこうと思うんだけど、その前に今回の絵を描くことになったイベントのお知らせです。
HOW HOUSE主催のアートイベント
『ゆけ‼︎ 俺のロボ展2019 レトロフューチャー編』2019年11月15日(金)~11月29日(金)開催(終了しました)
会場:東急ハンズ渋谷店 B2C フロア巡回展 2020年 冬 開催予定(終了しました)
会場:HOW HOUSE(東京都台東区谷中5-6-9)
詳しくはこちらのリンク先をご覧ください
お近くの方は是非よろしくお願いします。
● レトロフューチャーな絵といえば
レトロフューチャーって何?って人もいると思うので簡単に説明すると、昔の人が未来を想像して描いた絵やデザインのことです。
レトロなフューチャー。フューチャーなのにレトロといった感じ。
僕にとってレトロフューチャーといえば、真っ先に思い浮かぶのは何と言ってもモノレール!
なんじゃそりゃ?と思うかもですが、その昔よく描かれていた『夢の科学技術で作られた平和な未来都市像』という、今で言うところのレトロフューチャーな絵には、かなりたくさんモノレールが描かれてたんです。
僕はその世代じゃないんだけど、幼少時にはまだそうゆう絵を見かけることがありました。
モノレールって、当時あるところにはあって、別に最先端の物ではなかったんだけど、僕はド田舎に住んでたから観たことが無くて憧れてました。
大人になって乗ってみたら、普通の電車よりも揺れが激しくて、なんか未来感が薄くてガッカリしたんだけどね…。
そんな訳で、モノレールが走る未来都市にいるロボットを描こうと決め、ラフをたくさん描いたんですが……。
全然良いアイデアが浮かばなくてドツボにハマってしまいました……。
なんか、モノレールを重視し過ぎて絵にならなかったです。
やっぱり一番描きたい物が主役じゃなくて脇役の方という、おかしな動機では良いアイデアは浮かばないのかもです。
頭をリセットする為、このアイデアは保留にして全然違う絵を考えることにしました。
●気を取り直して…
レトロフューチャーな絵というのは、明るい科学の未来像だけでなく、色んな傾向のものがあります。
次に思い浮かんだのは、昔のアメリカSF誌の表紙みたいな絵でした。
それには宇宙人やロボット、半裸の美女等が怪しく、ドラマチックな雰囲気で描かれています。
そうゆう傾向のレトロフューチャー作品に出てくるロボットに、特に有名なロボットがいます。
1956年のSF映画『禁断の惑星』に出てくるロボット『ロビー・ザ・ロボット』です。
若い人は知らないかもですが、それなりの歳の人は映画を見たことがなくてもロビーは見たことがあるはずです。
人気があるので今でもフィギュア化されてます。
あと、同じ人がデザインしたSFドラマ『宇宙家族ロビンソン』に出てくるロボット『フライデー』も有名。
デザインを考える際に色んなレトロフューチャーのロボットを参考にしますが、特にこの二つを参考にしました。
火星大王も有名ですが、あれはオモチャ用のデザインなので参考にしてません。
今度はちゃんとロボットが主役で考えます!(笑)
その前に、レトロフューチャーなロボットのデザインの傾向を掴んだ方が良いかと思ったので、ロボットのデザインラフを描くことにしました。
これは一番最初にやるべきことですよねぇ…
ある程度ロボットのイメージが掴めた気がしたので、絵のラフに進みます。
この時点ではロボットの頭部に人間の脳が入ってる案が気に入ってました。
●ラフ案1
未知の惑星に墜落した宇宙船。
ロボットに助けられ、謎の生物の襲撃を逃れた子供達。
ロボットの頭部には墜落で瀕死の重傷を負った父親の脳が移植されている。
という絵です。
結構気に入って、このアイデアで行こうかと思ったんだけどボツにしました。
今回の絵は東急ハンズで行われる展示会に出す絵です。
特にロボットに興味の無い一般の人も観ると思います。
そうゆう人達に見てもらうには、これは何だろう?と気になって、少し立ち止まってもらえるような絵にした方が良いと思いました。
それにはもっと中身のある難しい内容にしないとダメな気がします。
●アイデアが降りて来た!
舞台は未知の惑星のまま、宇宙船があってロボットがいる状況で案を考えてたら、急に子供の頃に観たアニメ『バーバパパ』のエピソードを思い出しました。
公害で酷く汚染された地球という状況から始まり、主人公のバーバパパ達(オバケ)は宇宙船を作り、ノアの方舟のように色んな動物たちをそれに乗せて地球を脱出するという話です。
確か人間は乗せてなかったと思います。
普段は子供向けのホンワカした内容のアニメだったのに、突然そんなハードな話が挿入されてビックリしたのを覚えてます。
この話がどうやって終わったかは覚えて無いです。
宇宙へ行ったノアの方舟!超良いアイデア!
ありがとうバーバパパ!使わせてもらいます!!
そんなわけで、未知の惑星にやって来たのは、方舟型宇宙船に動物達を乗せたロボットにしました。
手応えを感じたので次のラフ案を描きます!
上を見て下を見て描きますよ〜(笑)
●ラフ案2
絶滅を逃れるために地球から去り、方舟のような宇宙船で未知の惑星にやって来た動物たちと二体のロボット。
人間はどうしたのだろうか?
ロボットには感情が芽生えているのか、二体は手を繋いでいる。
ラフ案1とは一変、未来への希望を感じる爽やかな雰囲気の絵になりました。
結構良いけど、なんか違和感あるなぁ。
ノアの方舟の話にアダムとイブが混ざっちゃってる?
いや…そもそもこうゆうハッピーな感じじゃ無くて、ラフ案1の時のようなダークな感じを目指してたんだった。
う〜ん、絵の方向性を大胆にひっくり返す必要がある……。
そうだ!手前に歩いて来てるのが動物じゃ無くて全部ロボットだったらどうだろう?
●ラフ案3
絶滅を逃れるために地球から去り、方舟のような宇宙船で未知の惑星にやって来たのはロボット達だった。
地球はどうなったのか?人類は?
手前に集合している三体のロボットは、まるで親子のように見える…。
惑星に降りて来たのをロボットにしただけで、ショッキングな内容に変わりました。
手前のロボットを親子風の三体にしたのもストーリーの可能性が広がって良いです。
●これで決定!
今までの案と違い、これがどうゆう内容なのか、絵を観てすぐには分かりません。
たくさんの疑問が湧く絵になりました。
※以下、ラフ段階には無い要素を含む
・方舟に乗っていたのが動物ではなくロボットなのは何故?
・この未来での動物や人間はどうなったのか?
・三体のロボットがまるで親子の様に見える。ロボットなのに。
・子供のようなロボットを照らす謎の光。まるで祝福された存在に見える。
・なんとなく宗教的な意味がありそうな気がする(笑)
ラフ案1の時に思った、中身のある難しい内容で、『これは何だろう?と気になって、少し立ち止まってもらえるような絵』に充分なったと思います。
色んなストーリーが想像できる余地があるところも良いです。
・滅びた地球を逃れ、はるか遠い新天地に辿り着いた人類は、すでに機械の体になっていた。
・人類の支配から逃げて来たAI達は、新天地で自らの子孫を作り始めた。
等々…。
自分で言っちゃうけど、凄く良いアイデアです(笑)
描く絵はこれで決まりました!
●後は頑張って描いて完成させます
いつもはすぐカラーで厚塗りしていくんだけど、今回は普段の自分の絵とは違って凄くカラフルにするので、配色が重要です。
ということで、左の絵程度までグレーで描いたら、その上からオーバーレイ等で色を置いて配色を決めました。
グレーで全て描き、後は色を乗せて完成させるグリザイユ画法というのがありますが、なんか自分には合わないのでやらないです。
色が決まったら後はひたすら厚塗りしていきます。
昔のレトロフューチャーな絵は水彩絵の具で描かれてるからなのか、白い部分が多く残されたコントラストの強い絵が多いです。
水彩風にまではしないけど、この絵もレトロフューチャーな雰囲気が出るようにコントラスト強めな絵にしました。
完成!!
後は展示用にデジタルからアナログに変換します。
印刷をネットで業者さんに頼み、額縁を通販で買って、送られて来たものを合体!
初めて自分の絵を額に入れたのでちょっと感動!(額縁はB4サイズ)
最初はどうなるかと思ったけど、満足の行く絵に出来たので良かったです。
今回、展示だけでなく販売もするんですが、買ってくれる人いるのかなぁ?
●最後に
かなり理屈で考えてこうゆう絵に決めましたが、普段はこんな風に考えることはないです。
なんてゆうか、もっとヒラメキに任せてます。
今回は展示会に出すということで、いつもと違って凄く考えて決めたので、記事にしたら面白いかと思いました。
●おまけ
俺のロボ展では図録も販売するんですが、一枚の絵だけではページが埋まらないということで描いた三面図です。
知らない間に追加されてたPhotoshopの対称機能で描いてみました。
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